翌朝。学校は昨日以上の大騒ぎだったが、
私はまっすぐ自分の教室に向かった。


教室では原田がイライラしながら、
椅子に座っていた。

私は久しぶりに心の底から、嫌な奴になれた。


ざわつく、生徒たちを掻き分けて、
なにか、清掃用の道具を持った、
業者さんが、教室に入ってきた。

業者さんは、黒板の前に立つと、
モップを持って、変な黄色の液体に浸けた。あぁ、絵を消すんだなぁ。
私はどこか寂しかった。


業者さんは、少しの間、
黒板をじっと見つめていた。

そして、

「消すのが、もったいないな」

と呟いて、モップで、黒板を拭いた。


静くんが聞いたらどれだけ、
喜ぶだろうか。
私は静くんの顔を思いだして、静くんの代わりに優越感に浸った。


ちなみに、私のモナリザや、薔薇、原田の似顔絵などは、特に何もなく、消された。
静くんのステンドグラスなどは、
やはり、どこかもったいなさそうに、
消していた業者さんだったのに。

ちょっと、ショックだった。


一時間目はやはり、
緊急の集会だった。もちろん、職員室に作られたアートの事での、集会だ。


周りを見ると、やはり静くん一人だけが目を子供のように輝かせて話を聞いていた。