吊りとも


翌日。私が学校に行くと、大騒ぎだった。

私は騒ぎの元である、自分の教室に入る。
ざわついている。


私はまっすぐ自分の机に座った。
机には、愛くるしい猫が描かれている。

静くんが描いたものだ。
皆は様々な声を発している。

「きれい」だとか、
「ひどい」だとか、
「誰が?」だとか、

私は全部を知っていた。
けれども何も言わなかった。


黒板を雑巾で必死に拭いている
教師がいた。私達のクラスの、
担任の篠田 政次(シノダマサジ)だった。

ただ、普通の雑巾と水では、
恐らく路上アート用のスプレーが
落ちるはずもなく、いらついていた。


一時間目は、緊急の集会になった。

理由はもちろん。アートについて。


周りを見ると、皆めんどくさそうな
顔をしていた。
でも、その中で一人だけわくわくしている生徒がいた。
静くんである。


静くんは2の4らしい。
一人だけ明らかに目が喜びに
みちあふれているのが、分かった。

遠くの私が見ても分かるのに、
誰も気が付かないんだろうか?

そう思ったが、瞬時に理解した。
誰も見ていないんだ。

私のことも、静くんのことも。

私はその時はじめて、
静くんの誰かに覚えててもらいたい、
という感情を理解できた。

理解すると、とても悲しくなり
泣きそうになってしまった。


生徒指導の先生の話は長く。
どんどん涙がたまっていった。


それでも、大丈夫だった。
だって誰も私の事は見てないんだから。