「そういやさ、お前魔界でホセに育てられた?」
「はい。それが何か?」
「ホセがぎゃーぎゃーうるさくて。何かあったの?」
「ん~お兄ちゃんは優しかったです」
「…」
「一回だけ殺されかけたんですけど」
「は?」
「えへへ…すっごく痛かった…」
アクアはこぼれた涙を拭いながら私が悪かったんですけど、と付け加える。
「わりぃ。人の気持ちが察せないのは俺の欠点だからさ」
「いいんです」
___今思い返せば、朝から様子がおかしかった。
「じゃあな、アクア」
いつもの笑顔も冷たかった。
「ただいま」
「お帰りなさぁい♪」
「…ああ」
「アクアお腹すいたよ~?」
「後でいいか」
「えー!」
「ちょっと黙ってろ」
「お兄ちゃんー!!」
「黙れって言ってるだろうが!!!」
バン、という音のあとすざましい痛みが頬に走る。
間もなく吹っ飛び反射的に受け流す。
ゆっくりと近づいてくる兄を見上げてどうしようもなく泣き出す。
「ごめん、なさい、ごめ、んな、さい…」
「…」
「助け、て」
だん、と衝撃を感じてアクアは気を失う。
「で、起きたらちゃんと手当てされてて。近くにご飯もおいてあって」
「なんだそら」
帰って来てからすごい勢いで謝られました、と苦笑混じりに笑う。
「ほんとに自決しかねない感じでした。怖かったです」
「何がだよ」
「首釣り寸前でした」
「あぶねぇなおい」
怖かった。
何より、ホセがいなくなることが。
あの綺麗な瞳が何よりも大切で。
大好きで。
「やっぱウィングよりお兄ちゃんの方が好きです」
「浮気かよ」
「はい!ウィングに、ですけど」
「…ひでぇ」
「へへへ」
「禁断の恋もそこまで来たら世話ねえな」
「恋なんかじゃないですよ。愛です」
「…俺がそれ聞きたいのって間違ってる?」
「今聞いてるじゃないですか」
「はぁ」
「…?」
「もういいや」
天然なのか計算なのか。
ホセに何度もそう言われた笑顔は、貴方に向けてるんですから。
お兄ちゃんを愛することくらい、許してください。
あくまで、家族としての恋くらい。
許してください。
「そうだウィング、お兄ちゃんのイケメンぶり、存分に見てくれませんか?」
「嫌だよ」
「いいじゃないですか。時間はあるんです」
「わーったって。そんな顔で睨むなよ」
ほっぺたにキスされても、もう動じない。
間違いなくアイドル系美形に入るウィングですらはねのけてしまう程のクールな笑顔。
微笑んだその表情が大好きです。
お兄ちゃん。
貴方の記憶はいつでも綺麗で、“お兄ちゃん”でした。

