『拓ちゃん……本当にあたしの事、好き?』

 一年前の春に聞いた桜の言葉。

『寂しいよ、不安だよ……』

『怖い……』

「桜……っ!」

 夜の闇の中、突然、拓人は咆哮した。抑えていた感情が一気に溢れ出してくる。

「桜……!」

 支えを失ったかのように膝を落とし、その場に跪く。大きな恐怖と絶望感が、拓人の五体を駆け巡る。闇に呑み込まれ、苦しさにもだえながら見上げた夜空には、満開を迎えた桜が、時折花びらを散らしながら、鮮やかに闇にその姿を浮かび上がらせ、優雅に咲き誇っていた――。