月影の涙Ⅱ~私はただの人形~【完】

何分たっただろうか。
この沈黙を破ったのは鷹杉 亮だった。


「お前はどうしてあそこに居たんだ?」

『雨宿りしてた。』

「雨宿りって完全に雨に当たっていたぞ?」

『じゃあ、雨宿りし終わってた。』

「なんだそれ?まぁいい、お母さんは?」

『家に帰ってくるなって言われた。』

「そうか……」


鷹杉 亮はそれ以上聞いてこなかった。


『鷹杉 亮は他に聞きたいこととかないの?』

「別に無理に話さなくていいと思う。後、亮でいいから。」

『わかった。じゃあ亮。1ヶ月前のこと聞いて?』

「ああ、いいよ。けど、無理すんなよ?」

『うん……』


そうして私の事を話した。


「色々大変だったな。辛かったのによく頑張ったな。」


そう言って優しく頭を撫でられた。


『え?亮は怒らないの?私お母さんとの約束を破ったんだよ?』

「そんな事で怒りゃーしねーよ。捨てたりもしねーよ。」

『やっぱり私は捨てられたんだね。』

「いや、……あ~もー。そーだ!お前は捨てられたんだよ。」

『え?』

「お前は現実を見ろ。お前は捨てられた。そして俺に拾われたんだよ!」

『私は亮にひろわれた?』

「そーだ。お前は俺に拾われたんだ。だからお前は1人じゃねー。俺がついてるしこれから俺達は家族だ!」

『家族?』

「そーだ。だからなんでも俺に言え!ワガママだっておねだりだってして欲しい事を言え!
なんだって俺達は家族なんだからな。」

『家族……』


家族という言葉が頭に響いた。優しい言葉。大切な言葉。でもいつか無くなるもの。