ナゴミは祖母と二人で暮らしていると言っても、生まれた時からここに住んでる訳では無い。

いわゆる居候の様なものだ。

だから、どうしても血縁関係のある祖母とはいえ若干の遠慮がある。

もっと子供らしく甘えないのかと聞かれるが、やろうとしても出来ないのが真面目な性格のナゴミだ。

渡り廊下から数歩進んだ所の部屋の前で、ナゴミは一度目を伏せた。

ため息を吐いてからスッと襖を開けると、学習机と椅子とベッドがある、和洋折衷なインテリアがバランスよく鎮座するフローリングの部屋。

ついさっきまで四葉がいた、ナゴミの部屋だ。

机の上に伏せていた写真立てを正しい位置に直し、フレームに付いた埃を指先で払った。

上品な若い女性と明るい笑顔の男性が自分達のほっぺで、間にいる幼い女の子の丸いほっぺを両側からプニっと挟んでいるという可愛らしい写真だ。

「母親、ねぇ……」

ナゴミは私服用の着物の下に隠して首にかけていたアンティークブローチを外した。

カチッと蓋の部分をスライドさせると、写真立てと同じ男性と女性と女の子の写真が顕になる。

こっちは写真館で撮ってもらったような、足元まで見える綺麗な写真だ。

「……お父様、お母様、私、頑張ってますよ」