劇は進行し、最大に盛り上がるラストへと近づいてくる。
「『あぁ、なんて美しい姫だろうか』」
王子役の男子の唇が、眠ったリンの手の甲に触れそうになる。
ガシャァン!
きゃあっと会場と舞台裏から悲鳴が上がる。
王子役の男子も白雪姫役のリンも演技どころではなくなり、身体を起こして客席側へ逃げた。
突然ステージ上から降ってきて、棺の渕に降り立ったのは……
「は、ハル……?!」
侍のようにユラユラとした殺気を纏いながらそこにいるのは、遥加だった。
髪を乱していて顔はよく見えないが、カツンカツンと薙刀をつきながらリンの元へ歩を進める。
「ねぇ……リンちゃん。なんであんな事したの?」
チャカっとリンの首筋に薙刀の先端が当たりそうになる。
刃先がライトの光で反射し、周囲の客はまた悲鳴を上げて遠ざかった。
リンの喉からヒュっと乾いた音がする。
「き、君!学園内に刃物の持ち込みは禁止のはずだぞ!」
教師が止めるのも聞かず、遥加は床に仰向けで倒れたままのリンに言葉を吐き捨て続けた。

