自動ドアが開いた。
出てきたのは、ワインレッドのフレームの眼鏡が似合う、背の低い優等生タイプの女の子だった。赤と黒を基調とした制服は、シワ一つ無い。
持ち手のない紙袋には本が入ってるらしい。大切そうに抱きしめていた。
「ごめんなさい怜真さん。お待たせしてしまって……」
「いや、全然大丈夫!ところで深月(みつき)ちゃん、良い本見つけられた?」
「はい!見つかりました!さっき買ったんです!葛ノ葉 亜松(くずのは あまつ)の最新刊なんですけど、今回はホラーじゃなくミステリーに挑戦したそうで……」
女の子の名前は深月らしい。読書好きなようで、怜真に向かって楽しそうに本について語っている。
ナゴミと四葉の予想は見事に的中してしまった。あの二人は兄妹には見えない。どう見てもカップルだ。
篠崎は三股していたことになる。
「やっぱり、また女か……あの制服は確か、鏡宮(かがみや)中学校」
また四葉は、シャッター音を無音設定にして、前を歩くカップルの姿をデジカメに収めた。
「よく知ってるね~、またお兄さん情報?」
「いや、そこの初等科の生徒会長と、校外活動の時に一緒になったことがあるんだ。その時に貰ったパンフレットに載ってた。
知ってるのは制服だけだから、あの娘のフルネームは分かんないけどね」
小学生二人がコソコソ後をつけてるとは露知らず、二人は歩いて行く。

