茜も驚いたらしい。丸い顔が真っ赤になって、トマトみたいになってる。
篠崎のほうは、何事も無かったようにニコニコしてる。
そしてまた少し言葉をかわしてから、赤い顔のままで茜は帰っていった。
「う、うわー……」
こっちも顔が赤くなってしまう。
そんなことを平気でやってのけるから、篠崎 怜真という人間は、本当に格好いいと思ってしまう。
「おいナゴ、惚れないでよ?それにあれ、決定的な浮気の瞬間だし。サイテーだな彼奴」
四葉がデジカメの画面を見せてくる。丁度篠崎の唇が茜の額に触れた瞬間のものだ。
シャッター音を無音設定にして撮ったらしい。
さっきの出来事が鮮明に思い出され、ナゴミは赤くなった頬を両手で抑えた。
惚れはしないが、恋愛映画よりも情熱的で、篠崎にというか二人のやり取りにドキドキしてしまう。
「あ、また歩き出した。行くぞ!」
そうこうしてるうちに信号が青になって、篠崎が真っ直ぐ横断歩道を渡り始める。

