「お待たせ〜」
「もー、怜くん遅いよ~!」
誰かと校門前で待ち合わせしていたらしい。少しぽっちゃり体型の女子が篠崎に向けてぷくぷくした手を振った。
ふわふわにパーマをかけたチョコレート色の髪に、ドングリのような小さな丸い目。全体的に小熊を思わせる風貌。
「ふむ。高等部三年月組の、真木 茜(まき あかね)先輩だな」
近くの大木にナゴミと隠れながら、四葉が顎を撫でる。
「覚えてるの?!」
「別に凄くも何とも無いよ。兄さん達から聞いたことがあるだけ。所属してる料理研究部のトップらしい。学年が違うから帰る時間が少しズレたみたいだな」
(お兄さんたちから聞いただけで学部とクラスと所属してる部活まで覚えてるのは凄いと思うけど……)
兄からの情報の集合体とはいえ、四葉の記憶力にはつくづく驚かされる。
茜と篠崎は、一言二言会話を交わしたあと、並んで校門を出た。
篠崎が自然に車道側に立って歩くのを見て、見た目だけでなく中身もイケメンであることを思い知らされる。
「茜先輩が、浮気相手なのかな?」
ナゴミが近くの電柱に隠れつつ、呟いた。
あんな可愛らしい小熊を、あの我儘女王が虐める所を想像すると、何だか可哀想になってくる。

