帰りのホームルーム終了の鐘が鳴った。
それから数秒後、ぞろぞろと高等部の制服に身を包んだ生徒が出てくる。
高校生に見えないくらいの老け顔の男子、罰ゲームなのかなんなのか、何故か似合わない女装をしてる男子、ガマガエルを思わせるでっぷりと太った男子……
(うわ……ほんとにイケメンがいない……)
少女漫画のような高校生活に憧れていたナゴミの理想像がガラガラと音を立てて崩れた、その時だった。
「あ、いた!」
四葉が一人の男子を指差して小声で叫ぶ。
指の指す方には、大勢いる中でもひときわ目立つ美男子が、靴を履き替えていた。
芸能人より整った顔とスタイル。制服を自分に合うように着崩してて、第二ボタンまで開けたワイシャツからは、形の良い鎖骨と十字架のネックレスが見える。
間違いない。篠崎 怜真だ。
「彼女である美奈先輩は、一緒じゃないんだね」
「所属されてる『紅茶部』の方で活動があるらしいからな。ちなみに週三で行われてるらしい」
靴を履き替えると、篠崎は友達との挨拶もそこそこに、一人で少し早歩きで校門へ向かった。
「付いて来い。追うよ」
ナゴミの返事も聞かず、四葉は小走りで彼を追いかけた。
「ま、待ってよー!」
刷り込みなのか何なのか、もうナゴミには逆らうという考えは無かった。

