ミレーユが生まれて15年の間に戦争が起こったことなどありませんでしたが、それ以前には国の領土を広げようといくつもの戦をしてきていることを噂に聞いていました。母はミレーユが小さい頃この国を出て行く際に言っていました。力やお金がすべてではないと。母は植物や芸術を愛する気品に満ちた性格でした。ミレーユは母の趣味がわからなかったけれど、その気品に満ちた性格をなんとなく好んでいました。母が出て行く際も母についていこうとしましたが、傍若無人な父の性格を知り、幼いながらもこの国を守り、国の行く末を見届けたいという思いがあり踏みとどまりました。――それが本当に国を守る気高き気持ちからなのか、ただの興味本位だったのかは今ではミレーユ自身もわかりませんが――それにそんな父親が時折見せるもの悲しい表情も気になっていたのです。

