「あ!やばっ!僕、今日移動教室だった!」

「そうなの?急がなきゃ!」

「うん。じゃあ、行くね。結芽ちゃん、志保さん、また明日!」




志保と麻生くんのやり取りを眺めるだけの私。
手を振って去っていく麻生くんの背中を眺めるだけ。

頑張って、とか。
またね、とか。
そんな優しい言葉なんてかけられない。

今まで、怒鳴ってばかりだったから今更優しい言葉なんてかけられない。



「葛藤してんねぇ」

「・・・あいつ、どうして私に拘るんだろう」

「好きだから、でしょ?」

「私のどこがそんなに好きなんだろう」



いい所なんてない。
捻くれてて。
意地悪で。




「私が結芽の事好きだって思ってることも、信じられない?」

「え?」



志保が私をじっと見つめる。