―――それを知ったのは、大学に入学してひと月経った頃のことだった。



「…これ、頼まれてたやつ」

「おお、悪いなあ。わざわざ持って来てもらって」

大型連休に乗じて幾つか休講が出たのを利用して地元に帰省した俺は、高校時代の担任に頼まれていた『大学受験体験談』を提出するために、母校を訪れていた。

…郵送でも提出できた筈のそれは言ってみればただの体のいい口実で、本当のところは、校内に掲示してある合格者一覧表で須藤がどこの大学に行ったのか知るため。

受験生の士気高揚のために設置されたそれをこんな形で利用するなんて、我ながら情けないと思うけど、須藤の情報を全く得られない俺にとって、今やそれが最大で最後の手段だったんだ。