「どうして…此処に…?」

息を切らしながら駆け寄る彼の姿に、思わず疑問が零れた。

願いの中にいたはずの彼が目の前にいるなんて、容易には信じられずに。

けれど、前屈みになり肩で息をする畑野くんは、目線だけ上げて。



「…聞きたいのは、俺の方。須藤、結婚するって言ったよね?」


これ、と差し出されたあるものに、思わず小さな悲鳴が漏れた。


「……あ」



彼の手にあるのは、神社の帰り際に認(したた)めたばかりの白木の絵馬。

誰の目にも触れることはないだろうと、密かに記した願いと名前を目の前にして、頬に熱を感じる。