「おめでとう」

真美が、社員用の休憩室に入ってくるなり、ひとりアイボリー色のソファーに座っている知恵の横に座り囁くように言った。

真美は、知恵が勤めている式場の専属プロの司会者である。

知恵とは同じ歳の33歳である。

司会業を始めた時期と知恵が式場で働き始めたのは、ほぼ同じ時期で、それからの付き合いである。

「ありがとう・・・」
うかない顔つきで知恵は言った。

真美は、誰か人がいないか、辺りを見渡した後で、
「なんだか、嬉しそうな感じじゃないようだけど・・・どうしたの?」

今朝、知恵から電話を受けた時も、同じようにうかない感じの知恵が、真美は気になっていた。