春色最中のコンチェルト

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「いらっしゃいませー、…あなたどうしたん?」

母さんが厨房に入っていく父さんを見て怪訝な顔をしている。

「ただいま、母さん」

声をかけると、

「最中やーん!お帰りぃ、元気しとった?」

いつものハイテンションが私を迎えた。

ハイテンションなこと自体は別に嫌いじゃない。
ただ、母さんの能天気さが苦手で仕方がないのだ。

しかしここで事を荒立てるのは良くない。

私は曖昧な笑みを作って母さんの抱擁を受けた。

「…ただいま」

「まぁでもあんたが帰ってきたら何もかも上手くいくんちゃう?きっとお店も楽かつ上手いこといくわ」

そんなトントン拍子、有り得るのだろうか。

「な、なんで?」

「だって若い子が入ったら売り上げ伸びるんやもん!」

最中が帰ってきたから、とかいう返事を期待した私はどこまでも馬鹿で、ワガママ。

去年なんかバイトでイケメン男子高校生が五人も入ってくれたのよ?とか何とか言いながら母さんは私をバックヤードへ連れていく。