扉の方に歩いて行こうとして、はたと
止まった。

(あの扉、歩くけば歩くほど遠くなる
んじゃ…!?)

「あ、あの!エドワードさんっ!」

くるりと振り返ったエドワード。
そんなしぐさも様になる。

「エドワード、で結構です。
何かございますか?」

頭がおかしいと思われるかなぁと思いつつ、訊ねてみる。

「あの、あの扉、歩くけば歩くほど遠く
なるんじゃ…?」

「あぁ、あれは楓様がお逃げにならない
よう、呪文をかけておいたのです。
混乱して飛び出して迷子になられると
困りますので。
これからは解いておきますね」

私の心配をよそに、エドワードはその
笑みを崩さずあっけらかんと言う。

そ、それって…私を閉じ込めようと
してたってこと、だよね…。

「楓様?何か不都合でもございましたか…?
それでしたらお詫び致しますが…」

「い、いえ。びっくりしただけ、です。」

そう言うと、エドワードは「そうですか」
と、ほっとしたように普通に扉を開けて
出ていった。