「でも」
アウゼが伏し目がちに口を開く。
「……楓は大丈夫なのか…?俺は、渚様を
裏切ってしまったのに…。」
「それは……。」
たしかに、アウゼは間接的とはいえ、
お母さんを殺してしまったのかもしれない。
………でもね、アウゼ。
「アウゼはもう、十分過ぎるほど苦しんだ
よ…。今度は私がアウゼの力になる。」
だから………
「もう、苦しまないで。幸せになろう。」
アウゼが顔をあげる。
その目には、大粒の涙が浮かんでいた。
「……私と、エドワードだけじゃない。
ルイス様だって、いるでしょう?
少しでも、支えになりたいの。」
アウゼが目を見開く。
一度うつむき、再び顔をあげる。
「……ありがとう。」
そう言って笑ったアウゼの瞳からは、
悲しい色が消えていた。