「えー、ここにXを代入し、計算すると
こうなりーーー…」

数学教師の分かりにくい解説を聞き流し、
窓の外に顔を向ける。

(天気いいなぁ・・・。)

運動場ではこの間入学してきた1年生が
元気に走り回っている。
あんなにはしゃいで倒れなければいいけれど。

そこに、先生の声が聞こえる。

「では、この問題を誰かに解いてもらおう
かなー…」

やばい、と黒板に視線を戻したその時。

「だ、誰だ!校内への侵入は違法だそ!」

体育教師の叫び声が開け放した窓から
教室に響き渡る。

何事かと窓から見下ろすと。

「!?」
前の席に座る冴も、ぎょっとしている。

なぜなら。

そこには一面、黒い車が止まっていて、
ドラマとかに出てくるような
サングラスをかけたお兄さん、もしくは
おじさん達がこちらを見上げていたからだ。

これはただ事じゃない。

あわてて身を隠そうとすると、

ーーガタンッ!

足が机にぶつかった。

その音に気づいたのか、サングラスの1人が
こちらを見る・・・。

あ・・・
目、合っちゃった・・・。

と私が思ったのと、サングラスがマイクで
なにかを伝えたのが同時だった。

その言葉は

「姫を発見。直ちにお連れします」

というものだった・・・。