新宿歌舞伎町の一角で、一人の男が何かを思い、ただ遠くを見つめていた。

「行きましょうか!」

隣でそんな男を見ていたもう一人の男が言った。

「あぁ」

そう言って男が黒塗りのベンツに乗り込もうとした時だった。

どこからともなく走ってきた別の男が、男に寄りかかるようにぶつかった。

スーツ姿の男の手には、血が滴(したた)り落ちたナイフが握られ、手は真っ赤に染まっていた。

「風間さん!」

男が駆け寄った。

そしてナイフを手に、その場を走り去ろうとした男を見た。

「おまえは…!」

白鳥雅史。
政治家人生の、最後だった。




ちょうどその頃、クラブ<楓>にまた一人、新人ホステスが加わった。

その女の名を、さくらと言った。