「お、お母さんを離してっ!!」
お母さんに馬乗りになって殴ろうとする男の手を掴む。
でも、全く意味はなくて。
「うるせぇ!!」
そう言ったあの男の顔は今までに見たことのない顔だった。
「朝陽はあっちに行ってなさい!」
必死に俺に逃げるように叫んでいた。
…そんなことできるわけない。俺は思いっきり、男の腕を掴んで、殴る手を阻止した。
体制を崩す男のすきを狙ってお母さんは逃れることができた。
急いで妹を抱きかかえ、車で逃げた。世間で言う、「夜逃げ」のようなものだ。
どこかの駐車場に車を停めた。
…なぜこんなことになっているのか。俺も妹も全く分からず、沈黙が続いた。お母さんも何も話そうとしない。ただ、ごめんねと謝るお母さんを、どうすることも出来ない自分が嫌だった。

