藤くんが今日も冷たい件について(仮)【完】



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「はぁ〜…」



私は今書道の授業を受けていた。



藤くんはあの後、仲良しの浜井くんに「音楽行こうぜ〜」と声を掛けられ、「今日、6時」の件について聞く前に立ち去ってしまったのだった。



今現在芸術の選択授業。
音楽・美術・書道の中から一科目選択しなければならない。


藤くんは音楽を選択している。
歌ってるとことか聞いたことないけど、あのイケメンボイスだからきっとうまいんだろうな。


麻美さんは美術。絵が上手でいつぞやかの大会で大賞もとったことがあるほどの腕前だ。


私はというと、歌を歌えば音が外れすぎてて壊れたラジカセみたいだねと言われ。


絵を書けば某有名キャラクターのネズミがこの世のものとは思えない生物になったこともある。


だからと言って書道に才能を見出しているわけではないが、消去法で選ばざるを得なかった。


それにしてもさっき佐伯さんを「みどり」と呼ぶだけではなく、約束もしていた。


今日の6時って…



やばい。気になりすぎて発狂しそう。



「…川嶋さん、もう墨はすらなくても大丈夫よ」



書道の斎藤先生に声を掛けられ手元を見ると真っ黒い墨汁がたくさん出来あがっていた。


まるで私の心を表しているようだ。