藤くんが今日も冷たい件について(仮)【完】

しかし、私の願いを神様は聞き入れてくれなかったようで。


数学の時間、私の予想通りペア学習になってしまって。


それでいて、私は昨日の今日だからもちろん宿題なんてやってるわけもなく。



「おい。早くやれよ」


「うぅ…」


「バカ」


「……」



影山修二から相変わらず罵倒されてる。


なんで体育はサボってんのに数学はサボんないのよ。


私はチラッと机を合わせ私の右横に座ってる影山修二を一瞥した。



「なに」



そう言ってギロッと睨みをきかせてくる。


その迫力ときたら。



「べ、べつに……」



私は慌てて視線を逸らし、手元の宿題プリントに目線を下ろした。



なんで、なんで……


あんなことがあったのにこの人はこんなにもいつもと変わらないわけ!?


そりゃ、昨日のこと話題に出されても困るっちゃ困るんだけど……


なんか、私ばっかドキマギして、ヤツは何にもありませんでしたよっていう余裕綽々な態度で、全く意識なんてしていない気がする。


3秒以内はキスじゃないっとかって言ってけど本当に思ってたりする?


私だってそう思いたいよ。


なかったことにしたいけど……


───私の中でどうしても消せない。


だってキスってそれだけ大事なものだと思う。


初めてのキスは私は倒れてしまったようだから記憶があまりなくて。


これは初めてのキスではないけれど、意識があった中では初めてのキスだったわけで……


あの乾いた唇の感触から流れ出した気持ちが伝わってくるかのようで。


自分の中で、どうしても忘れることなんてできなかった。