それはほんの一瞬の出来事だった。
あまりに一瞬の出来事で、何が起こったのか頭の中で理解ができなかった。
「……じゃあな」
そう言って影山修二は元来た道を歩いて行く。
次第に激しく降りはじめた雪のせいで視界は随分悪くなり始めていた。
でも、私はただ呆然と立ち尽くし、遠ざかって行く背中に声をかけることもできなかった。
体全身の力が抜け、薄く積もり始めた雪の上にスルリと肩にかけたカバンが滑り落ちたけれど。
私はそれをすぐ拾うことさえままならなかった。
寒さで震える指先で唇を押さえると、そこには……
影山修二の冷たくて乾いた唇の感触が確かに残っていた。
私……
ーーキス……された……


