「ふ、藤く〜ん!」



そんな私の言葉は聞こえていないのか、藤くんの歩みは止まらない。



「ま、待ってよ〜」



私は藤くんの背中を一生懸命追いかける。


一年前と変わらない光景。


でも昨日のこと、夢じゃないんだよね……?


私、藤くんと両想いになれたんだよね……?



「あ、そうだ」



藤くんはピタッと足を止めた。



「………藤くん?」



「今日、一緒に帰る?」



そう言って、藤くんは私に笑顔を向けた。


いつもの意地悪な笑みではなく、少年のような微笑み。


その笑顔に胸の奥がキュンとする。



「……は、はい」



私は恥ずかしくなって下を向きながら、そう返事をした。


すると、藤くんは私の返事を聞いたあと、すぐまた教室の方へと歩いていった。


いつものように待ってはくれないみたいだ。


私は藤くんの背中を見つめる。


藤くんが今日も冷たい。


でも


その奥にある優しさに気づいてしまったその時から。


この恋は生まれてしまったんだ。


知れば知るほどもっと好きになる。


だから覚悟しといてね。


今度は私が藤くんを夢中にさせてみせる。



「藤く〜ん、待ってよ〜〜!」



いつか、絶対に。






Fin