オフィスの華には毒がある

「?!」


ふわり、と右手に温かい感触。

見ると、主任に手を繋がれていて。別に、そーっと、ってわけでもなく、ぐいぐいとでもなく。ごくごく自然に。
ずっと前から、何度も手を繋いだことのある関係のように。


「あの……」


「酔っ払いだから、足元危険だから介抱して」

主任が不自然に前を向いたまんまで言う。


「……はい」


勿論、わたし達の足元はしっかり舗装されたアスファルトだから小石1つ落ちていないわけで。

「おじいちゃん、もうすぐ夏ですね」


「そうですね、ホームの桜も咲きますな」


「おじいちゃん、それは春ですよ」


急に始まった″老人ホームコント″(おもしろさは皆無)をしつつ、繋いだ手を離す気にはなれなくて。


信じられないことだけど、全然嫌じゃなくて。

斉木くんに手を繋がれたときに強く覚えた違和感が、全く無くて。