オフィスの華には毒がある

「……キスしていい?」


右手をわたしの頬に触れたまんま、ささやくように甘い台詞が放たれて。


いや、ここお店のすぐ横だし!とか、そういうことではなくて。


「駄目」


自分でも驚くくらいきっぱりと答える。


斉木くんが、一旦大きく目を見開いて、それから急に楽しげに笑いだす。


「そんな、迷いもなく断られたの初めてです、那奈さん酷いっ!俺、割とモテモテなのにー!!!」


アハハ……と響く笑い声と共に、そっと手がわたしの頬から離れていく。

それは、こんな爆笑する感じであっているのだろうか?わたしには、経験不足だからなのかなんなのか、正解が全く分からないけれど。


「本当にごめんね」


斉木くんがふいっと真顔になる。


「謝られると惨めになるんで、やめてもらっていいですか?」