オフィスの華には毒がある

二人並んで夜の道を歩く。


ああやっぱりこの季節の夜の空気感、好きだ……と味わいたいのに、状況がそうはさせてくれない。


何故だか話し出さない斉木くんに、わたしから話しかけるのも嫌で、黙々と足を進める。このまま駅について解散ならそれでいい気もするし。

ふと。


昼間の、ランチ中のみんなの会話を思い出す。


『本命にフラれた』
『本命は受付嬢のヤスエさん』


……そうだった。本命いるって言ってたじゃん。何が″前から好きだったんです″だっつーの。

そんなにわたしを騙して、何がおもしろいんだろう。


ぶすぶすと、心のなかに黒いものがたまっていく。

陰でまた笑うんでしょう。
あいつ、好きって言ったら本気にするんだぜーって。
みんなでゲラゲラ笑うんだよね?
俺の本命は受付嬢だっつの!とか言って。