オフィスの華には毒がある

「俺、ずっと前から那奈さんのことが、好きなんです」


……何言っているんだろう。
力が抜けて、土下指している斉木くんの横にへなへなと座り込む。


「……で?今度こそ、行き遅れババアを落とせれば、ランチでもご馳走してもらえるの?」


自虐気味に笑いがもれてしまった。


そりゃ、笑いも出るよ。何回バカにすれば気が済むんだろう。


がば、と斉木くんが土下座をしたときと同じくらいの勢いで顔を上げる。


「そんなんじゃないです。コーヒーとかも、そういうんじゃないんです」


あ。わたしが、コーヒーを賭けていたことも知ってる、って気づいたんだ。そりゃそうか。『出し惜しみ』の、話、したんだもんね。


もう、なんでもいいやと思いながらその甘めの顔を見つめる。


そういうんじゃない、ってなによ。