オフィスの華には毒がある

「それじゃ、あたし、こっちなんで」


ビルの外に出た所で、いつもの駅とは反対方向に身体を向ける環。


「んー?」


「やーだ、那奈先輩。明日はお休みですよ?休前日に彼氏に放置されるわけないじゃないですかー!」


……そうですか。

環のはち切れんばかりの笑顔を見ていると、別にそこまで嫌な気持ちにならないから不思議。


言われてみると、『このまんま家に帰って寝るだけです』と言っても誰も信じてくれなそうなレベルに、服装、メイク共に気合いが入っていて。


「それじゃ……「環ちゃーん」


わたしの背後から、環を呼ぶ声がする。


やーだ、こんなところまで彼氏のお出迎え?と笑顔で振り向くと、そこにいたのは……


「はぁーい、斉木。お久しぶりー」


「相変わらずかわいいなぁぁ」


「知ってまーす!」


わたしを追い抜いて、環と話し出す斉木くんの横顔。