オフィスの華には毒がある

「なんか、夜になって急に風が出てきたなー、夜中に雷雨のパターンだったら嫌だよなー。結構怖くない?真夜中の雷……大抵起きないから殆ど経験ないけどさ」


ペラペラ喋りつつ、夜空を見上げて、眼鏡をもう一度掛けようとしている仕草を思わず手を伸ばして止めてしまう。


「ん?」
と、言っていたかもしれない。不思議そうな表情で眼鏡を手にしたまんま、わたしを見下ろす。


引っ込みがつかなくて、掴んだ手に力が入る。
何やってるの、わたし。


見つめあう形になって、すごく時間が経っているような一瞬のような。

だけど、ごく自然に吸い寄せられるように、



ーーーっ。



キスをしてしまった。


″どちらからともなく″でも、″強引に奪われて″でもない。
わたしから、主任に唇を重ねてしまった。


思ったより、柔らかくて。
何故だか、ちょっぴり泣きそうになって。

……勿論、ドキドキして。