オフィスの華には毒がある

「遠藤さん、そういうこと気にするんだ?」


かぁっと頭と顔が熱くなった気がした。

別に、なんて言葉が喉の辺りでぐるぐるととぐろを巻いている。


「……」

だけど、わたしの口からは、なんの音も出てこない。


「付き合ってないよ」


さわわ、と風が吹いた気がした。


ていうか、そんなイケメンみたいなトーンで言わないでくださいよ、なんなんですかそれ……と笑い飛ばそうとして、主任の方を見上げると……思わず、息が止まってしまった。


主任が、丁度眼鏡を外して、髪の毛をバサバサと手ぐしでいじっているところだったから。


月明かりで見るその人は、やっぱりあの日わたしを助けてくれた人なわけで。


思わずじっと見つめてしまう。今日は格好が変だから、そんな風に見えないはずなのに、やっぱりその瞳に、その姿に、釘付けになってしまう。