『…夏美、私さ…待ってるのかな…?』
私が待たなくても、
彼はいつも“冬香ちゃーん”と呼び、教室に入ってくる。
当たり前のように私の席にやってきて、“俺と付き合って?”と言う。
しつこい、しつこいよ彼はー…
でも、来てくれないとなんだか気になってしまうー…
“好き”って言葉は嘘だったの?
“付き合って”と言うの、疲れちゃった?
『ずっと出入り口ばっか気にしてる。
それって、彼が来てないか、気になるからじゃない?
そういうことなら冬香は待ってるんだろうね、きっと彼のこと!』
夏美はそう言って、優しく微笑んだー…
私、待ってるんだー…
多分、ううんきっと、彼が“冬香ちゃーん”って呼んでくれるのを。
“俺と付き合って?”…そう彼が言ってくれるのを。
『私さ…もしかして前に進もうとしてるのかな…?』
それは独り言、のつもりだった。
でも私の言葉を聞いて、夏美は首を縦に振った。
『冬香、今度は誰の心配もいらないよ?
自己犠牲にならなくてもいい恋だよ?
だから、今度は冬香が彼のところに行ってみたら?』
……うん。
今度は私から行ってみようかな、彼のところに。
『私、行ってくる!』
勢いよく椅子から立ち上がり、夏美にそう言うと、ハルが夏美の傍に寄ってきて、
『冬香、秋也、7組だよ』
…そう、言った。
あ、私、彼のクラス知らなかったー…
『ありがとう、ハル』
私の言葉にハルも夏美も優しく微笑んだ。
私は二人の顔を見て、そして教室を飛び出した。

