『冬香ちゃーん!!』
休み時間になった瞬間、教室の出入り口から呼ばれた。
でも私は振り返ることなんてしない、もちろんクラスの人も私に“呼ばれているよ”なんてことも言ってこない。
…何故か?
何故なら黙っていても、私が席を動こうしなくても…
『冬香ちゃん』
私を呼んだ、その相手が私の目の前に来てくれるから。
『冬香ちゃん、あのさ』
『お断り致します!』
目の前に現れた人物の顔も見ることもなく、最後まで言葉を聞くこともなく、私はそう答えた。
『俺、まだ内容言ってないんだけど?』
『内容は教えて頂かなくても結構です!』
私は次の授業の準備をするべく、前の授業の教科書やノートを机に入れ、次の授業の教科書を取り出す。
あたかも、その人物がいないかのように振る舞う。
『ね、冬香ちゃん。
俺と付き合って?』