「あっ、はい!お久しぶりです学さん」
聞き慣れたその声の主は、遥の彼氏である佐久間 学(さくま まなぶ)で、その穏やかな声を聞いているうちに、突然の着信で焦っていた心が次第に静まっていく。
『久しぶりだね。ところで、遥ちゃんはまだ家にいるかな?携帯に連絡しても繋がらなくて』
困ったように笑うその声に、ハッとして自分が持ってきたショルダーバッグに視線を移す。
そう言えば、持ち上げたとき微かに震えていたような気がしたのだ。
何だか、申し訳ない気持ちがこみ上げる。
当事者はそんなことを思っている余裕がなさそうに走り回っているから、弟としてここは代わりに。
「何か、すみません……。すぐそこにいますから、代わりましょうか?」
姿は見えないが、洗面所から音が聞こえてくるから、きっとそこにいるはずだ。
『あっ、じゃあ伝言をお願いしようかな。遥ちゃんに、家まで迎えに行くよって』
優しい申し出が、申し訳なさ過ぎて胸に痛い。



