思えば、小学校の遠足の日も、中学校の文化祭の日も、高校の修学旅行の日も、大学に至っては入学式の日もそうだった。
叩き起して準備を急き立てている間に、母親はすかさず学校に連絡を、父親は車にエンジンをかけてすぐにでも出発出来る状態で待機、そうして用意ができた遥を、家族皆で慌ただしく見送るのがもう恒例行事と化している。
学生でなくなった今もそれは変わらず、放っておけば遅刻間違いなしの遥を、出勤時間に間に合うように叩き起すのが弟である優の仕事。
仕事がある時ですらそうなのだから、休みの日ともなれば言わずもがなである。
「財布と携帯、忘れないようにな。あと、家出る前に学さんに連絡しておけよ」
洗面所から飛び出してきた遥が、ワンピースを手にして再び駆け戻っていく。
その背中に声をかけていると、不意にジャージのポケットが震えた。
なかなか止まない振動に、慌てて携帯電話を取り出すと、急いで通話ボタンを押して耳に当てる。
「はい、もしもし!」
『あっ、もしもし優くんかい?』
電話の向こうから聞こえてきたのは、耳に心地いい穏やかな声音。



