姉弟ものがたり


ふんわりと花が開いたように微笑む香に、水筒から口を離してニヤリと意地悪く笑って見せる。


「香ちゃん、気になる人でもできた?」

「え!?」


驚いたように目を見開いてこちらを見つめる香に、得意げに笑い返す。


「今更しらばっくれても遅いからね」


ビクッと肩を震わせる香に追い討ちをかけるように椅子を寄せる。


「気になるなんて曖昧なとこ通り越して、本当はもう好きなんでしょ?」

「遥ってば、変な時だけ鋭くて嫌になっちゃう…」


真っ赤になって俯く香が小さく呟く。


「どんな人なの?」


身を乗り出すようにして尋ねると、香がチラッと顔を上げて諦めたようにため息をついた。


「スラッと背が高くて、綺麗な人…」

「…綺麗?男の人、だよね?」


思わず聞き返したその言葉に香が笑って頷く。