姉弟ものがたり


ドンドンと激しくドアを叩く音と、まだ何か喚いている声は無視して、ギリギリ履き終えていたジーパンにベルトを通していく。

相手をし続ければ、いつまで経っても支度が終わらない。

遥はどうでもいいが、学に迷惑をかけるのだけは避けたかった。


「まなぶくーん!ゆうくんが無視するー!!」

「だから邪魔しちゃダメだって言ったでしょ、遥ちゃん。ほら、下りておいで」


ドアの向こうから聞こえてくる階下からの学の声と、それに応えて素直に階段を駆け下りていく遥の足音に安堵しながら、優もまた薄手の上着をタンスから取り出す。


「映画か……」


急に静かになった部屋の中、何となくポツリと呟いてみる。

現在上映中の映画の中で、観たいと思っていたのは一つだけ。

さっきの“丁度いい”発言から察するに、遥は覚えていたのだろう―――二人でテレビを見ていた時に、たまたま流れたその映画のCMを見て、何気なく呟いた一言を。

デートを邪魔してしまう罪悪感と、ほんの少しの気まずさはもちろんあるが、観たいと思っていたのは事実なので、嬉しい気持ちもある。