「それが……ネットで検索してもそれらしい店は全くヒットしなくて。近くの店の人に聞いてみたりもしたんですけど、覚えがないって言われて。結局、名前も場所もわからずじまいです」
「そっか……」
話を聞いて残念そうに眉根を寄せた学だが、しばらくして突然納得したように、うんと頷いてにっこり笑う。
「そういう不思議な雰囲気のお店って、なんかいいよね。見つけた時の達成感もあるだろうし。僕、結構好きなんだ。隠れ家な感じのお店」
カップを片手に柔らかく微笑んだ学に、さっきまでふくれっ面でプリプリ怒っていた遥も、「わたしも好き!」なんて笑顔を見せる。
怒っていたかと思ったら些細な事ですぐ笑顔に戻って、相変わらず変わり身が速い。
「うん。優くんがいれてくれたコーヒーは、やっぱり美味しい」
立ち上る湯気と一緒に香りを吸い込んで一口啜ると、学が満足げに頷く。
「大げさですよ、学さん。インスタントなんですから、誰だって美味しくいれられます。お湯を注ぐだけなんですから」
「インスタントだけど、優くんのは特別だよ。特別美味しい」



