姉弟ものがたり



「学さんが来たらちゃんとお礼言っとけよ。それから、連絡したのに返事がないって困ってたから、それも忘れず謝れ」

「あっ、そう言えば携帯、どこに置いたっけ……」


自分で鞄に入れたくせに、教えてやる気力も失せて、小さくため息を零す。


「全く……寝坊して遅刻しそうだって気付いてたから、わざわざ家まで迎えに来てくれるんだからな、学さんは。姉ちゃんは、そんな学さんの優しさと気遣いに感謝と謝罪の心を忘れるな」

「えっ……まなぶくん、何で寝坊したこと知ってるの?実はエスパー!?」


テーブルに一つ一つポーチの中身を並べていた遥が、大きく目を見開いて振り返る。

ふざけているのではなく真剣に驚いているその顔が、時々心配になる。


「エスパーじゃなくたってわかるだろ。姉ちゃんとそれなりに長く一緒にいれば誰だって。大事な予定が入ってると、必ず寝坊するんだもんな、昔から」


優は遥の後ろにあるソファーに腰を下ろすと、なぜかメイク道具の仲間入りをして一緒に並んでいるリモコンを掴んで、テレビのスイッチを入れる。


「だって、楽しみ過ぎて寝られないんだもん」

「……小学生かよ」