昼休み。
「はい、焼きそばパン」
乱れた髪の那智が笑顔でやって来た。
「ありがと。はい、お金」
お金を返してそのまま手を那智の頭に伸ばすと、那智と視線が絡まった。
「な、なに?」
「髪の毛グシャグシャ」
すぐに逸らされたけど、私の心臓はバクバクだ。
それは、那智も同じで耳まで真っ赤になっている。
サラサラの髪を丁寧に直すと、すぐ手を引っ込めた。
「食べよう」
「うん、頂きます」
「頂きます」
那智をそっと、盗み見ると茉莉の言う通りやっぱり背が高くなった気がする。
気がするだけじゃなくて、確実だ。
「最近身長測った?」
「・・ん?測ってないけどなんで?」
「んー、身長伸びたよね?」
「そういえば、デニム短いかも」
「成長期かな?」
「だったら、良いな。もっと伸びて欲しい」
男の子だから、やっぱり身長コンプレックスとかあるんだろうな。
わたしはどっちでも良いけど、モテるのはイヤだ。
「レイナと釣り合うようになりたいし」
ボソっと言った言葉に、持っていたパンが落ちそうになった。
「え?」
「いや、釣り合うとか無理だけど、少しでも周りから変な目で見られないようになると良いなー、なんて」
変な目??
「なにそれ、そんなの気にしてんの?」
そう言えば、この前センパイに似たような事言われてたな。
「レイナに申しわけなくて・・・」
そんな風に思わせていたんだ。
「俺なんかと付き合ってもらって、本当奇跡っていうか、これ以上高望みしちゃいけないんだろうけど、、、」
「那智、なんか勘違いしてない??」
付き合ってもらってってなに?
「いや、勘違いしてないよ。レイナは俺と付き合ってれば、女子からの嫌がらせ無くなるだろうし、他の男から誘われるの少しは無くなるって思ったから付き合ってくれてるだけだって、俺はちゃんと理解してる」
は?那智は何を言ってるの??
「・・・・馬鹿野郎!!!!!」
「え?」
ガタンと激しい音を立てて、椅子が床に倒れた。
「那智なんか、那智なんか!!!ナヨナヨでネチネチしてるから那智って名前なんだ!!!!馬鹿馬鹿バカ!!!!」
わたしが罵倒すると、那智は大きな目を更に大きく見開いて固まってしまった。
「ちょっと、なにデカイ声出してんの?」
香たちとお昼を食べていた茉莉が、ただならぬ雰囲気にわたしに寄って来た。
「最低!わたしの半年返せ!付き合ってもらってるなんて、2度と言わないで!
なんで那智に上から目線で言われなきゃいけないの??わたしが那智と付き合いたいって思って付き合ってるんだから!!!そんな気持ちでわたしが那智と一緒にいると思ったの?バカにしないで!・・・フエーーーーーン!!!!」
言いたいことを言って、茉莉に泣きつくと、茉莉は頭を撫でながら那智に視線を向けた。
「この子、ちょっと情緒不安定だわ。とりあえず、教室戻りな?」
「で、でも」
「レイナが言った意味、ちゃんと理解出来たから電話でもしてやって?今日は私がレイナを家に送るから安心して」
「分かった、レイナまた連絡するよ」
トボトボと歩く後ろ姿が、涙で滲んで消えて行った。
悔しくて、悲しくて、涙が暫く止まらなかった。
今朝の幸せな時間に戻って欲しい。
那智の優しくて柔らかい笑顔を見たい。
あんな辛そうな顔なんか、見たく無かった。

