ある日、私たちは公園のベンチに座っていた。

今日は少し寒い。

ぶるっと身震いをすると、拓人が私を抱いて、膝の上に乗せた。

「たっ、拓人??」

彼はぎゅうっと私を抱きしめて、私の肩に頭を乗せた。

「寒ぃ」

心臓がうるさく暴れている。

緊張で、寒気なんて吹っ飛んだ。

今は顔に熱が集中し、熱いくらいだ…。

「そ、そーだね………」

けほっと小さな咳が出た。

「叶恋?」

彼は心配そうな声を出す。

「大丈夫だよ」

「ちょっとまってて」

彼は暖かい飲み物を買ってくる、と言い、私をベンチにおろし、肩に上着をかけて行ってくれた。

優しいな…………

上着からほのかに香る、彼の甘い匂いに胸がきゅんと締め付けられた。

私はその瞬間、何者かに後ろから口にハンカチを押し当てられた。

「……………っ!」

相手の力は強く、抵抗してもビクともしない。

引きづられるままに車に乗せられ、5分くらい経った頃に着いた場所は、古ぼけた隠れ家のような倉庫だった。