こんな暗い気分で春休みを迎えるなんて思わなかった。

ご飯を食べた後、部屋に戻ってのろのろと準備を始める。


真新しい制服も、全然嬉しくない。

可愛いって有名な秋月の制服を着るのがどれだけ楽しみだったか。

ベージュのブレザーに白いブラウス、赤いリボンにえんじのチェックのプリーツスカート。


買ったときは着るのが楽しみで眺めてばかりいた。


「はぁぁ…」


何でだよ、と叫びたい。


剣人から貰った物が私の部屋には溢れている。


ヴィトンとかエルメスみたいな高級ブランドじゃないけど、中学生にしてはそこそこ値段が張るバッグ。


お花がついたゴム。


お祭りで買ったハンドメイドの髪飾り。


高くて手が出せなかった、とても書きやすいシャーペン。


雑誌なんかで話題だったいい香りのボディクリーム。

私の誕生日にデートで買ってくれた、贔屓にしている作家さんの作品全冊。


本好きな私には嬉しすぎるプレゼントだったが、文庫とはいえかなりの値段だった。

それなのに笑顔で惜し気もなく買ってくれたのだ。


『絢莉が喜ぶんなら、こんなの別にいい』

剣人の声が頭に響いた。 


剣人はいつも《自分では買わないちょっと良いもの》をくれた。


お小遣いでは躊躇してなかなか買えない、でもいつでも欲しいもの。


剣人の優しさが溢れる贈り物だ。