その兵士の態度と青年の身なりから見て、どうやらその青年は、二人の上官のようだ。青年の背中には、真哉家の家紋。夜空を舞う鳳凰(ほうおう)とそれを彩るかのように舞い散る桜を型どった“桜鳳緋月”(おうほうひげつ)が丁寧に金糸で縫われていた。


「……今回ばかりは見逃してやる」
「あ、ありがとうございま「が、次は無いと思え」__っは、はい!」


恭時の放った言葉で、一時休戦中と言えど戦場。遠くから見守っている野次馬達のどこかたるんでいた場の空気がビリリと引き締まる。
それは、彼が姫付きの側近と言うこともあるだろうが、彼自身の内側から発せられる全身が切り刻まれそうな程鋭い気迫と、全身から溢れでる天性のカリスマ性が、そうさせるのだろう。


「……ところで」
「は、はい?」