風が吹く。

女の持つ細身の刀の鋭い切っ先が、ギラリと光り、一滴。真っ赤な鮮血が地面へとしたたり落ちた。


「……そろそろ帰らなくちゃ、恭時(きょうじ)に怒られる」


涼やかに吹く血生臭い風を受けながら女は、亡骸を一瞥した。そして片手に握っていた刀を今度は両手で握りしめ大きく振りかざす。そして、勢い良く刀を振り下ろした。

……鈍い音が辺りに響く。

振り下ろした直後は何も起こらなかったが、少しして刀の切っ先から、徐々に赤くなり始め、ついには刀の柄の部分まで真っ赤に染まった。

その紅さはまるで、兵士の亡骸から吸いとった血のよう。ただただ紅い。