次の瞬間兵士の体がドサッと派手な音をたてて倒れた。よくよく見ると頭部と胴体の間に赤い裂け目ができている。そこから鮮血がとめどなくあふれ出ていた。

きっとこの名も知らぬ兵士は、何が起こったのかも知らずに生きとしいけるものとして当然の“痛み”と言う感覚すら無く、死んだのだろう。


「……戦場では絶体に安易な行動は許されない。なぜならそれが自分の命を落とすような結末を呼ぶかもしれないから」


いつの間に現れたのだろうか。気づけば、つい先程まで息をしていた生々しい亡骸(なきがら)の側に、少女、と呼ぶには大人びていて、女性、と呼ぶには少し幼い妙齢の女が哀れむ風も無く、蔑(さげす)む風も無く、空を見上げていた時と同じ空虚な瞳で亡骸を見下げていた。