桜花録【オウカロク】―囚われし真実―

恭時の纏う空気がどんどん悪くなって行く様子は、もうその人物に会うこと自体が億劫(おっくう)だとでも言いたげだ。

眉間にしわをよせてどこか黒いオーラを撒き散らしながら早歩きをする恭時は、他人から見ても知人から見ても相当恐い。恐すぎる。


「恭時、どうしたんですか?そんな怖い顔をして……そんな怖い顔をしていては姫君に逃げられてしまいますよ」


“怖い顔”の所を異様な程強調してくる声と、その方角を見て恭時は思いっきり顔をしかめた。よくよく見るとこめかみに青筋が浮いているのが見てとれる。


「おや、おかしな顔をなさいますね、恭時。私は君に何か嫌われるようなことをしましたか?」
「そのくらいの事はご自分でお考えください、“鵬咲”(ほうざき)様」