――流石に外は暑いな


詩月は半月の入院で冷房完備に慣れた体に暑さが堪え、溜め息をつく。

病院と家とは隣同士だ。

なのに詩月は家の玄関に辿り着くなり、ヘタヘタと座り込んだ。


詩月は自分の体力の無さに呆れながら、半月ぶりの自分の部屋の空気を深呼吸して吸い込んだ。

詩月の母親が病室に持ち込んだ課題や教科書、それに参考書などを机の上に置きながら、「少しずつ、体を慣らしていかなくてはね」と微笑む。

退院後。

詩月が家にこもりがちになるのを心配し、理久が連日のごとく朝から訪ねて来ては散歩に誘う。

散歩中。

理久は詩月の気を紛わさせようとし、実によく喋る。


「今度の日曜にさ、縁日があるんだ。貢と郁を誘って、一緒に行かないか?」

理久は詩月に歩調を合わせ、ゆっくり歩く。


「人混みは苦手だし、縁日なんて……もし発作が起きたら迷惑かけるから」

詩月はそう言って断ったが理久は素直に引き下がらず、詩月は渋々頷くしかなかった。


「俺が 一緒にいるから心配するな」

理久は詩月に、トンと自分の胸を叩いてみせた。


縁日までの数日。

詩月は渋々頷いたはずなのに何故だか気持ちが落ち着かず、毎日カレンダーを確認した。