雨に似ている  (改訂版)

理由を話すまで放さない覚悟で、きつく握りしめる。


「周桜くん 何故?」


「放せよ。チャンス、実力、才能……親の七光り、そんなものは、何の役にも立たない。そんなに留学したきゃ君が留学すればいい」

詩月は、郁子を見下ろし冷たく吐き捨てるように言う。

郁子は、驚き戸惑いながら詩月を見つめる。


「僕がどんな気持ちで留学を諦めたのか……君にはわからない」

詩月は一際声を張り上げたかと思うと、胸に手をあて咳き込んだ。

顔をしかめ目を閉じる。


「周桜くん!」

郁子の叫ぶ声が詩月の耳元で響く。


「……大丈夫だ」

詩月は、胸を手で押さえ頼りない声で呟く。

詩月は制服のポケットから取り出した薬を口にし、肩で息をつく。

制服のシャツのボタンを片手で器用に開ける。